これは僕が数年前、栃木県の鬼怒川の方に遊びに行った時のお話しです。
その当時付き合っていた彼女と、車で泊りがけの旅行に。
うきうき気分で渓流釣りとかを楽しんでいると、帰りに旅館に戻ろうかという話に。
栃木でも、鬼怒川の方ってかなり道路が特殊な感じなんですよ。
※グーグルマップ
このように、山しかない。
メインの道路が2、3本あって、後は周りは山に囲まれている天然の要害です。
その時、僕の車のナビゲーションで旅館の情報を検索しました。
鬼怒川の渓流釣り場から、その宿まで約20分ほどで到着予定だと表示された。
「もう20分で着くね~」
「うん、汗かいたから旅館ついてお風呂入りたいな」
というような会話を、彼女と繰り広げていたことをまだ覚えています。
運転をしていると、ナビゲーションが『ここを右折してください』というようなことを言い始めました。
(あれ、おかしいな……。来た時はこんな道通ってないんだけど…)
と思いながらも、重度の方向音痴な私はナビに頼ってそれを信じました。
ショートカットなんだろう、と気楽に考えていたんです。
まず、入り口が山の獣道だったんですね。
彼女も「こんな所来たっけ?」と言いましたが、僕も「こっちの方が近いんじゃない?」というような返し。
で、この道がとにかく凄いんです。
※このイメージ図に近いです
車の轍があるんですけど、そこに水が溜まってじゃぶじゃぶと音もするし、ものすごい揺れる。
軽自動車の私の車なんかで入ってくる場所じゃなかったんですね。
さながらジェットコースターのように揺れながら、ゆっくり運転していくんですけど……。
途中で、右側に変な小屋を見つけたんです。
山岳部の経験がある私は、それが町の山用の連絡小屋のようなものだと気づきました。
これがあるって事は『普通の道』じゃないと段々と気づいてきたんです。
流石に10分、20分も走っていたら……。
「ねぇ、おかしいよね……どうして山に繋がってるの…?」
と彼女は怖がる様子。
運転する僕も、おかしい事にはとっくに気づいてたんです。
でも、引き返そうにもちょうどいい広さのスペースがないんですね。
仕方ないから前に進まされてる状態が続いていて、段々と周りも暗くなってくる。
本当に恐怖を感じ始めた時、やっとUターン出来るスペースが見つかってすぐに引き返すことに。
片道30分くらい、ゆっくり走ってきた道をもう一度ゆっくり引き返す……。
これだけで60分間、山の中にいることになりますよね。
そもそも、こうなった原因はなんだ!?と思い返したらナビが悪いわけで。
僕は、一般道路に出たらすぐに路肩に車を止めて、ナビゲーションを操作し始めました。
それが……。
栃木の山奥の、最深部に行くようなルートを指示していたんです。
このナビは2010年頃のナビで、古い情報で構築されている。
しかし、僕たちの目的の旅館なんて2010年より前にあるはずなのに、なぜこのルートで行けと指示をしたのでしょうか……。
変な汗に身を包まれながら、旅館に着いた私は、開口一番旅館の受付の方にこう聞きました。
「さっき、●●という渓流釣り場からここに来ようと思ったら、変な山道に入れられたんですけど……」
「ああ…それは大変でしたね。また……あったんですね……」
ま た …?
またって何??
「この辺りはたまにナビゲーションが山道を指示するっていう事があるみたいで、遠方から来たお客様がそうおっしゃることが多いんです」
「ちなみに、その道を行けばどうなってたんですか?」
「あれ、途中の看板に気づかなかったんですか……?」
一段トーンを下げた店員が、私にこう言いました。
「通行止めで、山の頂上付近で止まりますよ」
もし、あのまま進んでいたら……。
ろくなUターンポイントも無くて、強制的に暗い森を走らされていたかもしれません……。